1.ひとりぼっち

それがいつのことだったか、なぜ今自分が”ここに居るのか”、それすらも分からなくて。何千と流した涙で床が埋まる前に。私はここから飛び立つのだ。
 白い羽は裏切らないことを、私は知っている。そして何億と先に消えていく人々を、私は爪を手のひらに食い込ませて歯を食いしばる。
 消える人々を、まるで恨んでいくように。
 消える鳥々を、まるで祝っていくように。


 嘘つきな月は、今日も部屋を照らした。白一色で染まり上がったこの部屋は、天上だけがガラス張りで猫のようにニヤけた月が空を占領する。
 白いベッド、白いテーブル、白い椅子。部屋には白以外は存在しない。けれども夜には黒がそこを占領して、やはり夜はすべてを奪っていく。
 ベッドに寝っ転がりながら私は空を見上げた。流れていく雲が幽かに月を隠しては光を奪う。

「あぁ、面白みなんて」

 それを面白いと思う自分は、きっと、もうずっと前に壊れて形を成していないのだ。
 正方形の部屋には、人は私しかいなかった。

 一人、ひとり。ひとり、ひとり。

 さみしい。


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