あくま しょうかん

 僕の家に、悪魔が来ました。

「しょうかーん!やぁーっ、とうっ!」

 僕は7歳の小学生だ。今日も完ぺき。うん、最高だね。

 まぁそれはいいんだけど、今日はあくまを"しょうかん”することにしたんだー。確かパパの部屋にそういう本がたくさんあったんだよね。ふふ、僕知ってるんだ―。

 じゅんびはいいんだけど、どうしてかキレイに円が書けないんだー。絵はなんとなくで書けるんだけど、キレイな円が書けないから困っちゃって。

「ま、いいよねー」

 パパに勝手に本を持っていったことがばれないように、僕は”しょうかん”するのを夜にしたんだー。それもパパやママが寝た後だよ。いつも寝ちゃうけど、きょうは起きるって決めてたし。
 後でバレないように、僕は”マホウ円”をきょう学校で貰った保健だよりの後ろに書いた。

「こんな感じかなー?」

 本を見ながら、紙と本をこうご見たりした。ちょっとちがうけど、こんな感じで問題はないよなぁーっと。

「それから、これを言うの? うーんと、読めない……」

 僕の開いた本のページには、読めない字がたーっくさん書いてあった。ひらがなでもカタカナでも漢字でもない、記号みたいな字。これじゃあ進めないや。
 でもせっかく書いたし、なんか言わないともったいないかなー。

「ソロモン72柱の一人、バエルさん、出てきてでてきてー」

 やっぱりだめだよなー。ピクリともしないやー。僕なんかじゃあでてきてくれないよね。

 そういえばパパが「悪魔召喚にはものすごい対価が必要だから、お前にはまだできない」って言ってたっけ。「たいか」ってなんなのか分からないから知らないけどー。

 それから僕は本を閉じて、まほう円の書いた紙をぐしゃぐしゃにしてゴミ箱にすてた。
 本はあとでこっそりパパの部屋にもどしておこう。バレない、よね。他にも本がたくさんあったし、一冊くらいでがみがみ言うパパじゃないし。だいじょーーぶ!
 
 今回は失敗しちゃったけど、次はぜったいに成功させてやるんだー。僕があくまをしょうかんしたら、多分パパやママは喜んでくれるだろうから。それまでは内緒にすんだー。呼び出せたらきっと二人ともびっくりするよ! 楽しみだなぁ……!

「ふぁーーあ。ねむいや。ねよーっと」

 近くにあった僕の布団にもぐりこむ。ちょっと冷たくて、温もりはなかったけど、でもきっとパパとママは帰ってくるよね。
 褒めてくれるよね。いつか絶対に帰ってくるよね。僕のところに。

 パパ達はずっと寝ているんだもん。

【君にはまだ早いよ。もう少し、もう少ししたらまたくるよ。その時は対価もちゃんと美味しくいただくとするよ】

 布団からあわてて飛び起きると、そこにはやっぱり何も居なかった。絶対に聞こえたと思ったけど、気のせいかなー。
 そのまま僕が布団にもぐり込むと、すっとねむいのがおそってきて、そのまま夢の中に入ってしまった。
 しょうかんは失敗したけど、きっと次にはできるはず。がんばるんだ、僕は。